2006 Fiscal Year Annual Research Report
密度行列繰り込み群を用いた多自由度二次元量子多体系の数値的研究
Project/Area Number |
18684012
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 尚和 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40302385)
|
Keywords | 二次元電子系 / 量子ホール系 / 密度行列繰り込み群 / スピンドメイン / 量子多体問題 / 数値計算 / スピン転移 / 核スピン |
Research Abstract |
強磁場中の二次元電子系では全ての電子が同じサイクロトロン運動を行うことにより、一電子状態のエネルギーが全て同一となるランダウ準位が形成され、マクロな縮退が基底状態に現れる。この縮退は電子間のクーロン相互作用によって解かれ、ランダウ準位の占有率によって多彩な基底状態が実現すると考えられている。しかし、このような強相関電子系の極限に相当する系の基底状態を理論的に決定するためには、膨大な自由度をもつ量子多体問題を解かなければならない。 本研究では従来の計算手法では十分な解析が困難であったこのような巨大自由度をもつ量子多体問題を解くための計算手法の開発と、そのための効率的な計算機環境を構築し、内部自由度をもつ量子ホール系の基底状態と低エネルギーの性質を明らかにすることを目的としている。 本年度は主に多自由度二次元量子系をターゲットとした計算手法の開発と、そのための計算機構成の最適化を行い、さらに、その有効性の検証をするために、核スピン制御の観点から注目されている電子スピンの自由度を考慮した量子ホール系の占有率2/3の基底状態の計算を行った。 具体的な成果としては、まず、密度行列繰り込み群の多自由度二次元量子系に対する最適化により、計算時間をほぼ半減させ、同時にプログラムに適した計算機構成に変更することで、従来の約3〜4倍の規模の計算が実行できるようになったことが挙げられる。これにより、厳密対角化法や量子モンテカルロ法といった伝統的計算手法では困難であった占有率2/3の分数量子ホール状態におけるスピン非偏極状態からスピン偏極状態へのスピン転移にともなうスピンドメインの形成を世界で初めて理論的に確認することができた。このスピンドメインの形成は核スピン制御に利用することが可能である。この成果は論文として直ちに発表する予定である。
|