2008 Fiscal Year Annual Research Report
密度行列繰り込み群を用いた多自由度二次元量子多体系の数値的研究
Project/Area Number |
18684012
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 尚和 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 准教授 (40302385)
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Keywords | 二次元電子系 / 量子ホール系 / 密度行列繰り込み群 / グラフェン / 量子多体問題 / 二層系 / スカーミオン / 数値計算 |
Research Abstract |
強磁場中の二次元電子系では電子の運動エネルギーが全て同一となるマクロな縮退が基底状態に現れる。この縮退は電子間のクーロン相互作用によって解かれ、分数量子ホール状態をはじめとする多彩な電子状態が実現する。この電子状態を理論的に理解するためには、膨大な自由度をもつ量子多体問題を解く必要があり、電子相関の本質に関わる多く問題がこの系において未解決の状態で残されている。本研究は、従来の計算手法では困難であったこのような巨大自由度をもつ量子多体問題を解く計算手法の開発と計算機環境の整備を行い、量子ホール系の基底状態と励起構造を明らかにすることを目的としている。 本年度はこれまでに開発してきた並列計算機のさらなる高性能化を図るとともに、近年注目を集めている単層および二層グラファイト(グラフェン)の磁場中の基底状態と励起構造を調べた。その結果、計算機については、CPUを高性能化させ主記憶領域を拡張することで、前年度と比較して1.5倍の規模の計算が可能となる計算環境を整えることができた。また、グラフェンに内在するバレーの自由度に加えて層の自由度が存在する二層グラフェンの基底状態、およびそこからの低エネルギー励起の構造を調べ、二層グラフェンに非常に安定な分数量子ホール状態が存在することを明らかにした。二層グラフェンの分数量子ホール状態における素励起は単層グラフェンで現れるバレー・スカーミオン励起と異なり、バレー偏極したラフリン型の素励起であることも分かった。これらの成果により、従来の半導体界面やグラフェンにおいて実現する二次元電子系の特徴が明らかになるとともに、二次元電子系のより深い理解と、実験的検証に必要な定量的理論予測を可能にする環境が整備された。
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