2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18684020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中辻 知 東京大学, 物性研究所, 助教授 (70362431)
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Keywords | 幾何学的フラストレーション / スピン液体 / スピングラス / 二次元三角格子 / パイロクロア / 重い電子 / スピンアイス / 異常ホール効果 |
Research Abstract |
我々の開発したS=1擬二次元三角格子系NiGa_2S_4においてNiを他の元素で置換する様々な不純物効果について研究した。非磁性不純物置換では強固に残っていた比熱の温度の二乗に比例する振る舞いが、導入した不純物のスピンのサイズによって系統的に変化することを確認した。このようなスピンのサイズに依存する状態としては擬一次元のハルデーン系がよく知られている。我々の結果は、擬二次元系でも一見同様なことが起こっている可能性を示唆しているようである。さらに、国内外に渡って核四重極共鳴、中性子回折、μSR、光電子分光などの共同研究を進めるために、多結晶、単結晶の提供を行った。その結果の中でも、核四重極共鳴の実験では、核スピン緩和率の発散的振る舞いからスピンが静的な短距離秩序を形成していることが判明し、NiGa_2S_4のスピンが新奇な状態にある可能性が考えられる。また、Ybによる重い電子系が少ない中、YbAlB_4の組成を持つ新しい構造を発見し、純良化の結果、重い電子系であることを見出した。 Pr_2Ir_2O_7は、パイロクロア格子をなすイジング型のPrモーメントが相関の弱いIr5dの伝導電子と混成した近藤格子系である。我々は、最近育成に成功した単結晶の研究により、Pr_2Ir_2O_7が低温でスピン液体的に振る舞うことを見出した。さらに興味深いことに、最近、このスピン液体的低温状態において非従来型の異常ホール効果を発見した。近藤温度20Kからホール抵抗はしだいに増大し始め、スピン液体的振る舞いが現れるワイス温度1.7K以下でlnTの発散的増大を示す。低温でのホール抵抗の温度依存性・磁場依存性は、共にスピン軌道相互作用による従来型機構では説明できない。Pr_2Ir_2O_7の基底状態は、"金属スピンアイス"という大変興味深い状態に近い可能性があり、Two-In Two-out状態のため、各Pr四面体は大きなスピンカイラリティを持ち、このことが非従来型の大きな異常ホール効果の起源となる可能性がある.
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