2006 Fiscal Year Annual Research Report
コンビナトリアル手法による高分子ナノ物性の理解と予測
Project/Area Number |
18685014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 敬二 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (20325509)
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Keywords | コンビナトリアル手法 / 高分子ナノ物性 / 階層的ダイナミクス / 表面・界面・超薄膜 / 走査プローブ顕微鏡 / 中性子反射率測定 / 動的粘弾性測定 / 時空間分解能光測定 |
Research Abstract |
ナノテクノロジーの発展に伴いデバイスの微細化、すなわち、素材料の微細化が急速に進行している。高分子材料においても例外ではなく、厚さ100 nm以下の高分子膜が幅広い分野で使用されるようになってきた。高分子材料を超薄状態で使用する場合、その熱的・力学的性質はバルク材料のそれらとは著しく異なるが、材料設計の際に考慮されていないのが現状である。本研究では、高分子超薄膜で観測される特異な分子鎖熱運動性を表面および基板界面の効果、さらには、分子鎖が超薄空間に閉じ込められる効果に基づき包括的に理解することを目的とする。本年度は、代表的な非晶性高分子である単分散ポリスチレン(PS)を用いて種々の基板上に超薄膜を調製し動的粘弾性測定を行った。その結果、セグメント運動に対応するα過程の緩和温度および緩和時間の拡がりは基板の表面j自由エネルギーに強く依存した。また、膜表面を基板と同じ材料でキャップしたサンドイッチ膜ではその効果は顕著であった。これらの結果を、PS膜表面の緩和ダイナミクスと比較することで、高分子ナノ物性に及ぼす表面・界面の効果を明らかにした。さらに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)でも同様の実験を行い、上述の成果が非晶性高分子には普遍的であることを確認した。年度後半には、種々の媒体中でPMMA超薄膜の緩和ダイナミクスを評価した。その結果、媒体が空気から二酸化炭素に置き換わっただけでも緩和温度や緩和時間の拡がりが変化することを見出した。H19年度以降は、高分子の種類、分子量と分布、雰囲気、基板表面の自由エネルギーと粗さ、膜厚等を系統的に変化させて、表面、界面、超薄膜の分子鎖熱運動性をそれぞれ評価し、データを蓄積する。
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