2006 Fiscal Year Annual Research Report
電子スピン共鳴による有機電界効果トランジスターのミクロ評価と特性制御
Project/Area Number |
18686002
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
丸本 一弘 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 助教授 (50293668)
|
Keywords | 有機半導体 / デバイス構造 / 電界効果 / 電子スピン共鳴 / 伝導 / 有機トランジスター / ミクロ評価 / 電荷キャリア |
Research Abstract |
有機分子のエレクトロニクスへの応用を目指した分子エレクトロニクスの研究が近年盛んになり、電界効果トランジスター(FET)などの有機デバイスの開発・応用が進められている。有機FET特性のさらなる向上のためには、FET構造中の有機層と絶縁層との界面における本質的な伝導機構の解明が必要不可欠である。本研究の目的は、分子レベルで材料評価を行える高感度な手法である電子スピン共鳴(ESR)を、有機低分子を用いたFETに適用し、グレイン内やデバイス界面などにおける有機低分子集合体のミクロ評価を行い、デバイス界面におけるキャリヤーの本質的な伝導機構を解明することである。 本年度は、有機物中で最も高い移動度を示す有機低分子材料ペンタセンを用いて研究を推進した。ESR試料管に挿入可能なサイズのペンタセンFET構造を作製した。基板および絶縁層には、ESR信号を出さない、石英ガラス基板およびアルミナ膜を用いた。小型真空蒸着装置および成膜コントローラを導入して、膜厚を制御しながら、ペンタセンの薄膜を蒸着した。 作製されたFETの特性を、半導体パラメータ・アナライザおよびLCRメータを用いて精密に評価した。半導体材料のp型特性を明らかにし、電荷蓄積状態を確認し、標準的なFET動作を確認した。作製されたFET構造を用いて電場誘起ESR観測を行い、電界注入キャリヤーの電子状態を研究した。注入キャリヤーのスピン数をESR信号強度から直接求め、電荷数と比較した結果、電界注入キャリヤーは全てスピン1/2を持っ事が証明された。電場誘起ESR信号の解析により、電界注入キャリヤーの空間広がり(波動関数)を評価し、ペンタセン分子で10分子以上に広がっている事を証明した。これは、キャリヤーの本質的な伝導機構がバンド的であることを意味している。 また、デバイス界面における分子配向も明らかにした。以上の成果について、Phys.Rev.Lett.(2006)で報告すると共に、日刊工業新聞と日経産業新聞にも研究成果が掲載された。
|
Research Products
(7 results)