Research Abstract |
本研究では,ナノメートルの領域で超高速かつ超高精度に位置決め制御を行なう技術をナノスケールサーボと定義しこれを実現するための基礎技術を研究することを研究全体の目的とする。その応用は,ハードディスクや光ディスクなどストレージや半導体・液晶露光装置,新材料の開発や原子・分子レベルの測定や分子や原子の操作,ナノスケールロボティクスと多岐に渡る。本研究課題では,その基礎制御技術を創出するために,原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope : AFM)の深針として使用されているナノプローブとナノステージの新しい位置決め制御技術の研究を行なう。現在のAFMでは,1枚の画像を取得するのに分単位の時間が必要であるが,この高速化を試みると,従来の原始的な制御系ではカンチレバーの高次機構共振モードを励振する問題が存在する。そこで本研究では,振動抑制制御など高度なアドバンスト制御を導入し,ナノプローブの超高速超高精度位置決め技術を開発した。 現在市販されているAFMは,制御系はブラックボックス化されており,その信号にアクセスすることは不可能であるが,本研究ではその信号や仕様を公開したAFMを特注し,インターフェースを自作することにより,制御系を自由に設計できるシステムを構築した。この装置を用いて,1)AFM画像を高速に取得するためのナノプローブの超高速制御技術,及び2)表面凹凸が大きく変動する物質に対して,高分解能のAFM画像を取得するための超高精度制御技術の研究を行った。すなわち,探針と試料表面を接触させながら表面形状を測定する「コンタクトモード」において,フィードバック系の帯域制限を受けることなく試料表面の高速測定を可能とする「表面形状オブザーバ」を提案し,その理論構築と実証を行った。また,AFMの制御においては,カンチレバーのたわみを一定値に保つレギュレーション問題なので,従来から2自由度制御は導入されてなかった。しかしながら本研究ではAFMのスキャン方式に注目し,前方スキャン時の制御誤差信号を学習することにより,後方スキャン時の指令値を生成する予見フィードフォワード制御を提案し,従来法よりも極めて高速なナノスケール画像取得を達成した。また,主に来年度に研究を行なう予定である,ナノステージの超高速超精密サーボ制御の準備研究を行った。
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