Research Abstract |
河川流量は,河川管理上最も重要な水理量の一つであり,精度良くモニタリングを行うことは不可欠である.既存の河川流量計測法には多くの問題点が指摘されており,現在でも流量を「直接」計測可能な高規格モニタリング手法は確立されていない.このような要請に対しては,流速鉛直分布計測が可能な超音波ドップラー流速分布計(ADCP)などの超音波計測技術と河川流シミュレーション技術を組み合わせた流量モニタリング手法が有効であると考えられる.対象とする河川流場は,出水時の非定常性,並列螺旋流,複断面・植生域周辺の三次元乱流構造,河床変動や側岸侵食に伴う境界形状の大変形などにより,時空間的に大きく変化しており,現段階では,河川流モデル自体が十分確立されているとは言い難い.本研究では,上述した超音波計測技術と融合させる河川流モデルを構築することを念頭にして,モデル構築上ポイントとなる乱流構造や流速鉛直・横断分布特性を現地観測により明らかにすることを目的とする. 主な内容は,以下の2点である. (1)乱流計測が可能な超音波ドップラー流速分布計を用いて,出水時における河川乱流計測を行った.その結果,既存の室内実験では「定常」と見なせる弱い非定常性の出水イベントにおいても,レイノルズ応力などの乱流統計量が増水期と減水期で大きく変化しており,乱流構造に対する非定常性の影響が大きく現れていることが明らかとなった. (2)ADCPを用いて,多くの河川(江戸川や多摩川,荒川など),様々な出水イベントにおける流速鉛直分布データを収集・解析した(n=4000).その結果,流速鉛直分布の平均像は対数則と非常に近く,また,流速ピーク位置が水面近傍で現われることが示された.さらに,水深平均流速と表層付近の平均流速の比である更正係数が,一般に用いられている値よりも小さく,実河川における流速鉛直分布特性の見直しの必要性が示唆された.
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