Research Abstract |
本研究は,交通の時間価値を実証的に分析し,その特性を把握することを目的とするものである.今年度は,交通時間価値の国際比較ならびに,余暇時間価値の新たな計測手法の開発を行った. (1)交通時間価値の日独比較 本研究は,東京とカールスルーエとの活動ダイアリー調査データを用いて,まず,両都市間の資源配分特性の違いを考察し,次に,同一の資源配分モデルに基づいて推定された交通時間節約価値を比較することによって,人々の行動特性の比較を行うものである,二都市の活動ダリアリー調査データ結果の比較から,カールスルーエの人々は,東京の人よりも休日の外出を選好する傾向にあること,1週間当たり勤務日の帰宅時寄り道余暇回数についてみると,やはりカールスルーエの方が東京よりも約2.5倍多いこと等がわかった.また,交通時間節約価値の分析結果から,東京では,余暇活動のための交通時間節約価値が,平均賃金率の2〜5倍程度である一方で,カールスルーエでは,ほぼ同程度となること等が明らかとなった.これらは,人々の余暇に対する意識や都市の余暇施設,交通サービスの違いを反映している可能性を指摘できる. (2)余暇時間価値の新たな計測手法の開発 本研究は,休日の余暇活動を念頭に置き,人々の自宅内の余暇活動と外出による余暇活動とのトレードオフを考慮した資源配分モデルを用いて,時間価値の計測を行うための手法の検討を行うものである.まず,加法分離型効用関数を使用した資源配分モデルのパラメータ推定時に生じる問題について示し,次にその問題を解決するために,外出活動を行うか否かの離散選択と,外出活動を行った場合の資源の連続配分とを同時に取り扱う離散・連続選択モデルの定式化ならびに推定方法の検討を行った.その後,この手法を東京都居住者を対象としたアクティビティに関するアンケート調査データに適用し,実際に時間価値の推定を行った.その結果,離散・連続選択モデルを用いた方が,離散選択モデルのみのケースよりも妥当な時間価値が得られた.
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