Research Abstract |
本研究では, 我が国で行われた交通行動の研究成果を用いて, 我が国の旅客交通時間価値の特性についてメタ分析を行った. 本研究で使用したデータは, 1980年から2006年の間に発表された審査付き論文において, 主に離散選択分析によって交通行動を分析した研究成果であり, 最終的に198の交通時間評価値を用いた. まず, 対象とした研究で使用された手法や基礎データの時系列的な特性を分析し, 次に, 都市内交通や都市内交通, 交通目的等の特性別に交通時間価値の統計値を求めて比較を行った. その後, メタ回帰分析によって交通時間価値の算定式を推定した. その結果, 都市間交通の交通時間価値は都市内交通の交通時間価値よりも高いこと, 通勤・業務目的交通の交通時間価値はそれ以外の目的の交通よりも高くなること, 航空利用者の交通時間価値は, 他の交通機関利用者よりも高くなること, 平日の交通時間価値は休日よりも高いこと, SPデータを使用して推定された交通時間価値はRPデータを使用した場合よりも低いこと, 等が明らかとなった. また, それらの原因を, 交通時間価値の理論的な背景から考察した. これらの成果は, 今後の我が国における交通時間価値の検討に寄与できるものと思われる. 推定精度に依然として問題は残るものの, 本研究で推定された回帰モデルを活用することよって, 個別のデータを収集することなく, 交通時間価値の概算値をある程度得られるようになった. また, モデルの特性やデータ収集方法の特性が, 交通時間価値に与える影響を把握できたことにより, 今後, 新たなモデルが新たなデータを用いて推定されるときに, その結果を, 既存のモデルの特性と比較し, 客観的に評価することに使用することもできるであろう.
|