Research Abstract |
近年実用化されつつある超高強度コンクリートは単位セメント量が多いことによる発熱, 水和反応にもとづく自己収縮など, 初期の体積変化が顕著であることが知られている。本研究では, 実構造物にどのような初期応力・初期欠陥が生じるかを検討し, 超高強度コンクリートの実大柱の性能について検討を行うものである。実験および解析的検討の結果, 以下の点が明らかになった。 ・ 超高強度コンクリート部材に入るひび割れについては1)鉄筋周囲のひび割れ, 2)部材内部に断面横断方向に入るひび割れで表面に確認されないもの, 3)部材表層から4cm程度の隅角部かぶりに生じるひび割れ, 4)表層の亀甲状のひび割れ, の4点が確認された。 ・超高強度コンクリートは, 打込み温度が低く, 水和発熱による温度履歴が高温を経るほど, 自己収縮が大きくなる傾向があることが確認された。この結果, 冬期の柱打込みが最もひび割れ発生条件として厳しく, 従来のマスコンクリートの傾向と異なった。 ・ 解析によって, 自己収縮は, 長期軸力によって鉄筋を圧縮降伏させる可能性があるが, たとえ降伏しても, 鉄筋コンクリートの挙動として大きな問題とならないことが示された。 ・ 超高強度鉄筋コンクリート中の温度履歴を有する自己収縮は, 部材内部縦方向にひび割れを節制するような応力を生じさせることが, 実験・解析の両面によって明らかになった。 ・ これらの自己収縮応力やひび割れを抑制するために, 膨張材および収縮低減剤を用いた超高強度コンクリートを開発して実験したところ, ひび割れ抑制を達成可能であることが確認された。 研究成果を踏まえると, 構造部材の性能の観点から高強度コンクリートの自己収縮の低減を, 収縮低減剤, 膨張材, 含水セラミック骨材を用いて行うことや, 特殊な鋼繊維を用い, ひび割れを抑制・分散させるとともに, 局所的な破壊を防止することが有用と考察された。
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