Research Abstract |
本研究では, 現地の伝統的技術保持者(大工棟梁)に伝統的住宅建築(以下, 伝統家屋)の模型制作を依頼し, その制作工程を記録・分析することで, フエにおいて伝統的に継承されてきた建築技法を解明することを目的としている. 昨年度までにベトナム中部のフエ, 中部クアンナム省, 北部ハーナム省の大工棟梁に合計4棟の模型制作を伴う設計技術調査とその記録を行ってきたことを受けて, 今年度は本研究課題の総仕上げとして, フエの大工棟梁へ縮尺1/1の伝統家屋の模型制作を依頼することとした.制作工程の記録と制作と並行した聞き取りは, 縮尺1/5の模型制作でこれまでに得た知見の再確認と同時に, 縮尺1/1となるとどのような差異が生じるかに重点をおいて進められた.縮尺1/5の模型制作調査と同様に, 梁行き断面図の設計方法, 平面計画の方法, 各部材の断面寸法計画について制作中に聞き取り整理した.制作過程と聞き取り調査の映像記録も同様に行った. 縮尺1/1の模型制作は, 当然ながら縮尺1/5模型に比して制作に時間を要することもあり, 昨年度までに得られた結果を基礎に, その具体的内容についてより詳細に確認する機会が得られた.これまでの縮尺1/5模型では梁行断面計画などの全体の計画の把握は可能であったが, 柱, 登り梁ケオ, 大貫チェン, スエン等の主構造材の各部寸法について基準となる断面とその相互の関係, また柱転びの決定方法とそれに伴う各部寸法の調整方法, 仕口の加工方法等について, 断片的な把握に留まっていたが, それらについて縮尺1/1模型を製作することで具体的な知見を得られたことが大きな成果であった. 本年度は, 日本建築学会の学術講演会(広島)において, 本研究の成果の一部を整理して報告し, その後の成果については日本建築学会計画系論文集に3縞を投稿, うち1編が2009年4月号に掲載予定, 他2編が査読中である.
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