2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18686059
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 永宏 Nagoya University, 大学院・工学研究科, 准教授 (00329096)
|
Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / ナノバイオ |
Research Abstract |
我々はこれまでにKFMという手法を用いて、親油あるいは親水性表面上における生体分子の電気的特性を評価してきた。本年度は疎水・疎油性表面であるFAS(perfluorodecyltriethoxysilane)の自己組織化単分子膜(FAS-SAM)に注目し、FAS-SAM上における生体分子の電気的特性と吸着挙動との相関関係を調査した。 まず、シリコン(Si)基板上にFAS-SAMを作製し、この表面上におけるDNAの表面電位を測定した。DNAの表面電位は基板を基準とした場合、+100mV〜+200mVであり、FAS未処理のSi表面およびNH_2-SAM表面上のDNAの表面電位(それぞれ+5〜+8mV,-60〜-80mV)よりも正に大きな値であった。この表面電位の違いは基板上におけるDNAの会合状態にも反映された。SiやNH_2-SAM表面上ではDNAは線状あるいはネットワーク状に吸着・集合するのに対し、FAS-SAM上では球状の凝集体が観察された。これはDNA-基板間に働く相互作用の形態が各々の表面で異なるためである。 さらに、我々は異なる電気的特性を有する表面でのフィブリノーゲン(HPF)の吸着挙動を調査した。具体的には、FAS-SAM/Siマイクロパターン表面を光リソグラフィーにより作製し、このマイクロパターン表面上でのHPF吸着実験を行った。その結果、FAS領域に選択的にHPFが吸着することが確認された。逆にNH_2-SAM/Siマクロパターン表面の場合は、HPFの吸着量は両領域ともにFAS-SAMに比べ少ないという結果を得た。このFAS-SAM表面に対するHPFの特異的な吸着挙動は、HPFとFAS-SAM表面間で働く静電斥力が他の表面に比べ小さいために起こると考えられる。実際、ゼータ電位測定および光導波路吸収分光法から、HPFとの静電斥力が小さい表面ほどHPFが吸着しやすいという結果を得ている。これらの結果は表面の静電ポテンシャルがHPFの動的挙動に大きく影響を与えることを示唆している。 本研究で得られたこれらの結果は生体分子の動的挙動と材料表面の電気的特性を関連付ける上で有用な知見である。
|
Research Products
(32 results)