Research Abstract |
裁荷ユニットにより外力を作用させた鉱物薄片を偏光顕微鏡により観察すると, 鉱物の光弾性効果によって, 干渉色の変化が生じる. この干渉色変化により, 鉱物中の応力場を可視化できる可能性があることが前年度までに明らかとなった. ただし, この干渉色の変化量は, 鉱物の結晶方位に対する観察する光線の入射方向や, 作用する外力の方向によって変化する. すなわち, 光学的に異方的な鉱物は異なる光弾性テンソル成分を有しており, 観察する条件によっては, 光弾性効果により応力場の可視化が困難であることが予想される.そこで, 結晶軸方位が異なる石英薄片について, 裁荷ユニットにより外力を作用させ, その光弾性効果を観察した. その結果, c軸の直交方向に外力を作用させた薄片をc軸に平行方向に観察した場合, 最も大きな屈折率変化を示すことがわかった.次に, 均質化温度以上に加熱し, 内圧が数十MPaまで上昇した包有物周辺の干渉色変化を観察した. ホスト鉱物は石英であり, c軸に平行な方向に観察した. 裁荷ユニットにより15MPa程度の外力を作用させた場合, 顕著な干渉色変化が生じるにも関わらず, 包有物の加熱によっては, 同様の干渉色変化が観察されなかった.しかしながら, 本手法は鉱物の応力場分布を比較的容易に可視化できる方法であり, リタデーションを精度良く測定できれば, 包有物がデクレピテーションに至るまでの応力場分布の変化を評価できると結論できる.一方, 試験片に用いた石英(ブラジリアン石英)のエッチングを行った. 実験に用いた水晶は, ブリュースターフリンジや異常光学を一部示す. したがって, 作用させた外力以外に包有物のデクレピテーションに影響を与える因子がある可能性がある.フッ化水素アンモニウム水溶液によるエッチングを行ったところ, エッチピット, ヒロック等は結晶にまばらに分布することから, デクレピテーションへの影響は低いと考えられる.
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