Research Abstract |
(1) 翻訳後修飾やプリロセシングを伴うペプチドホルモン群に共通した前駆体ペプチド構造に着目し,類似のモチーフを持つペプチド群を,シロイヌナズナのゲノムデータベースよりin silico抽出し,それらの実際の成熟型構造を決定するという戦略で,複数の翻訳後修飾・プロセシング依存型ペプチド群を見出した.それらのひとつ,CEP1は前駆体ポリペプチドから翻訳後修飾とプロセシングを経て15アミノ酸ペプチドとして分泌されるが,低濃度で根端メリステム活性を低下させ,根の成長を顕著に抑制する生理活性を示すことが明らかとなった.CEP1は側根原基のみで発現していることから,根系の形成に何らかの役割を果たしていると期待できる. (2) PSKやPSY1などのペプチドホルモンの生産に重要な翻訳後修飾酵素であるチロシン硫酸化酵素(TPST)の精製を行ない,PSY1前駆体ペプチドの硫酸化モチーフ周辺のペプチドを固定化したアフィニティーカラムを用いて,シロイヌナズナ培養細胞由来ミクロソーム画分より,1回膜貫通領域を持つ62kDの酵素タンパク質の精製・同定に成功した.AtTPSTは,ゴルジ体に局在しており,植物体全体で発現していた.T-DNA挿入遺伝子破壊株(tpst-1)の解析を行なった結果,根端メリステム領域の無秩序な細胞分裂および細胞肥大に起因する根の成長不全,植物体全体の矮小化,維管束分化の不全などが観察された.AtTPSTはマウスTPSTと機能的には全く同じ硫酸基転位反応を触媒するが,配列上の類似性は全くない.このことは,植物と動物は進化の過程で独立してチロシン硫酸化酵素を獲得したことを意味しており,進化的に興味深い.
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