2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18687004
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
宗景 ゆり Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 助教 (30423247)
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Keywords | 光合成 / 乾燥ストレス / 電子伝達 / プロテオミクス |
Research Abstract |
本研究では、強光乾燥ストレス条件下での光合成電子伝達制御機構の解明するために、カラハリ砂漠に自生し優れた乾燥強光耐性を持つ野生種スイカを材料に、タンパク質の網羅的解析および生理解析を行った。特に、葉緑体チラコイド膜のプロトン輸送効率に関わる2つの因子1)シトクロムbf複合体、2)循環的電子伝達系に着目し、単離チラコイド膜や生薬を用いて、分光学的に電子伝達活性を測定し、電子伝達に関わるタンパク質の解析を行った。またストレス前後の葉の切片を作成しストレスによる形態変化がないことを確認した。 1)乾燥・強光ストレス後にpIが酸性側にシフトしたシトクロムb6f複合体のRieskeサブユニットが出現することが明らかになった。強光ストレス後の電子伝達活性を単離チラコイドにおいて解析した結果、光化学系II、光化学系Iの活性は共に低下していないが、シトクロムb6f複合体で電子伝達が律速されていることを示す結果を得た。このときのシトクロムb6f複合体量はストレス後でも低下しておらず、pI変動を引き起こす修飾によって電子伝達抑制が起こることが示唆された。 2)Electrochromic shift(ECS)システムを用いた分光学的解析により、直線的電子伝達に対し、プロトン濃度勾配を測定した結果、比較的長い期間の乾燥ストレス下において循環的電子伝達活性が上昇することが明らかになった。またこの条件下での野生種スイカの葉緑体ではATP合成酵素やシトクロムb6f複合体の量が低下していることが明らかになった。これらの結果から、長期的な乾燥ストレスに馴化できる植物では循環的電子伝達の上昇やATP合成酵素量の下方制御が起こり、電子伝達活性とプロトン濃度勾配の制御を行っていると考えられた。これらの結果を国際雑誌に投稿し受理された。
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