2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18688002
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
近藤 歩 名城大学, 農学部, 助教授 (60340296)
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Keywords | crassulacean Acid Metaboliam (CAM) / 光合成炭素代謝機構 / 葉緑体 / 耐乾性植物 / 乾燥ストレス / クロロフィル蛍光 |
Research Abstract |
これまでの研究から,ベンケイソウ科のカランコエ属をはじめとする数種の多肉植物において,乾燥ストレスと光の複合的な要因によって葉肉細胞の葉緑体が集合する現象を見出した.この現象は,一般的に知られている植物,イネ,トウモロコシ,エンドウ,ソバでは見出されず,CAMを遂行する多肉植物のみで見出された.この場合,葉緑体の集合体は細胞内部に塊状体として形成される.このような集合体の形成は,植物ホルモンの一つであるアブシジン酸(ABA)によっても誘導され,さらに集合体が形成されることで葉の光透過率が著しく上昇することが明らかになった.これらの結果から,多肉植物で見出された葉緑体の集合現象は,乾燥ストレス応答に密接に関連した形態反応であると考えられた. 本年度の実験では,葉緑体集合運動に伴う光合成速度およびクロロフィル蛍光を測定した.その結果,ベニベンケイソウにおいて,潅水停止2週間の乾燥ストレス条件下で日周的な光合成パターンに大きな変化が見出された.暗期でも明期でもCO_2を吸収しない,いわゆるCAMアイドリング現象が見られた.またこの条件下では,明期で葉緑体の集合体が形成されていた.さらに,クロロフィル蛍光測定の結果,量子収率(Fv'/Fm')の著しい減少および非光化学消光(qN)の上昇がみられた.したがって,乾燥ストレス下で葉緑体が集合することにより,過剰の還元エネルギーを熱放散という形で放出していることが示唆された.葉緑体集合現象とCAMアイドリング現象との関連については,細胞内におけるCAM経路を明らかにする上で興味深く,今後の課題として残された.
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