2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18688003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高谷 直樹 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 准教授 (50282322)
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Keywords | 真菌 / 嫌気呼吸 / ミトコンドリア / 分子進化 / 発酵 / カビ |
Research Abstract |
申請者らの研究などから、真菌(カビ)などの真核生物があたかも原核生物(細菌)のように、多様な無機・有機物を最終的な酸化剤として発酵や呼吸をすることが明らかとなってきた。1996年に本邦の研究グループにより、カビFusarium oxysporumが硝酸呼吸(脱窒)を行い嫌気的条件下で生育することが、真核生物としては初めて報告された。本研究では、この詳細を解明すると共に、新規な発酵・呼吸系を見いだした。これにより、真核生物が酸素呼吸に依存せずに生育できること、真核生物の嫌気的エネルギー獲得機構が多様性をもつこと、カビが低酸素条件下への適応機構をもつことが明らかとなった。本研究の成果の要点は、(1) カビF.oxysporumとAspergillus nidulansをモデルとして、これらの多様な嫌気代謝系(硝酸呼吸、アンモニア発酵、異化的硫黄還元)の未同定の構成成分を明らかとしたこと、(2) これらの代謝系の相互関係、発現制御機構を多面的に解析し、カビの嫌気的エネルギー代謝の「なりたち」の一部を解明したことである。この成果は、真核生物のエネルギー代謝の多様性を示す例として科学的意義が高い。一方、一連の研究がなされる以前には、これらの嫌気的なエネルギー獲得機構は原核生物固有のものであり、進化的に古い代謝であると考えられていた。本研究により、将来、原核生物から高等真核生物に至る「エネルギー獲得機構の変遷・分子進化」を考察する上で重要な手がかりを得ることができた。即ち、最も下等な真核生物の一つであるカビがこのような嫌気代謝を行うことは、原核生物から真核生物に到る過程でのエネルギー獲得機構の進化に対する知見を知る上でも重要となるであろう。
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Research Products
(3 results)