Research Abstract |
1) 重水素標識フェノール酸の調製 (1) 重水-重塩酸を用いてpHを調整することで重水素置換率を向上させ, より効率的に[2, 4, 6-D_3]-α-レソルシル酸, [2, 6-D_2]没食子酸を得ることができた。(2)重水素置換反応は重水素イオンの芳香族炭素への求電子置換反応であり, 置換基効果によって重水素置換率が制御されていることを見出した。 2) ^<13>C標識フェノール酸類の合成 (1) 対応する出発物質プロモフェノールに^<13>CO_2を作用させてベンゼン環に隣接する3位炭素原子を標識, [1-^<13>C]酢酸エチルを用いて1位カルボニル炭素を標識し, [1, 3-^<13>C_2]フェルラ酸を収率13%で合成した。(2)(1)と同様の合成で未標識酢酸エチルを用いて[3-^<13>C]フェルラ酸を収率20%で合成した。(3)対応する置換ベンズアルデヒド類と[1-^<13>C]酢酸エチルを結合させて, 1位カルボニル炭素を標識した[1-^<13>C]フェルラ酸, [1-^<13>C]カフェ酸, [1-^<13>C]シナピン酸を合成した。 3) 標識フェノール酸類を用いた動物試験 (1) 合成した[2, 6-d_2]没食子酸, [1-^<13>C]フェルラ酸, [1-^<13>C]カフェ酸および[1-^<13>C]シナピン酸を, 未標識化合物と同時に試験動物に投与し, 0.5時間後, 2時間後の生体内部位(血中, 胃, 腎, 肝,腸)における濃度をLC-MSのSIRモードで同時定量した。その結果, 標識化合物は未標識化合物とほぼ同様の挙動をとり, いずれの臓器でも投与後0.5時間後の濃度が高く, 投与後2時間後の投与化合物濃度はいずれも大きく低下していた。以上の結果から, 安定同位体標識フェノール酸類は, 動態解析試薬として有用であることが示された。
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