2006 Fiscal Year Annual Research Report
餌料環境変動が動物プランクトンの加入・成長・生残に与える影響の解明
Project/Area Number |
18688011
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
高橋 一生 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所混合域海洋環境部, 主任研究員 (00301581)
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Keywords | 海洋生態 / 環境変動 / 水産学 / 地球化学 / プランクトン / 生物生産 |
Research Abstract |
3月、5月。7月に東北水研が実施している親潮・混合域モニタリング調査航海に乗船し、現場における餌環境とカイアシ類、特に春季ブルームを利用して産卵を行うEucalanus bungiiの生物量、分布深度の季節変化にっいて調査を行った。さらに産卵期にあたる5月航海では、成体雌の産卵速度と孵化成功率および摂餌速度と餌料選択性について、複数の測点で実験を行った。その結果、現場での卵生産は原則として現場の植物プランクトン量(クロロフィル)に依存していることが明らかとなった。ただし現場での孵化率は最高でも平均40%程度と、既往の知見に比べ低い値を示し、この原因の解明が次年度以降の課題として重要であると考えられた。同時に行った摂餌実験では、本種は大型の珪藻類を中心とした植物プランクトンを好んで摂食していることが明らかとなり、同時期に出現する同サイズ種のNeocalanus cristatusに比べ移動能力のある微小動物プランクトンに対する選択性が低いことから、現場における大型珪藻類の多寡が本種の加入を左右する要因の一つであると推測された。以上の結果をふまえ次年度以降は現場における産卵速度、孵化成功率と餌環境との関連についてさらに測定例を増やして検討することを計画している。7月航海では春季産卵期に生み出され加入した幼体の死亡要因を検討するため、各ステージの個体を採集し、餌のない環境下での飢餓耐性を測定した。飢餓耐性は成長とともに高く、また水温の上昇とともに低くなったが、高水温に対する耐性はコペポダイト4期以降に著しく低下することが明らかとなった。また行動観察、生理実験用個体の安定供給を目的として現場から得られた卵から孵化した個体の飼育も試みた。餌料、飼育容器、飼育方法などの工夫の結果、卵から成体まで成長させることに成功した。成体に至るまでに7ヶ月を要したが成熟にはいたらず、成熟要因の解明が次年度以降の課題として残され、その第一段階として酸素電極を用いた呼吸速度の測定からそれぞれの個体の生理状態を把握することを計画している。
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