Research Abstract |
本年度は, マイクロアレイ解析の結果明らかとなったNeuregulin 1の機能に着目し, その作用する卵丘細胞におけるERK 1/2のリン酸化が排卵期に誘起されることの意義について, 卵巣特異的ERK1/2遺伝子欠損マウスの解析を行い, EGF like factorによる卵丘細胞でのERK1/2のリン酸化が, 排卵期特異的な遺伝子発現に必須であることを初めて明らかとした(Fan, et.al., Development, 2008 ; Fan, et.al., Science, 2009). さらに, 卵丘細胞特異的にEGF like factorにより発現する自然免疫系は, Toll-like receptorにより精子の接近を感知し, ケモカインを分泌することで精子の運動性を制御し, この機構が受精に必須であるという, 受精における自然免疫機能について初めて解明した(Shimada et al., Development, 2008). これらの排卵期特有の遺伝子発現解析の結果を, ブタ卵丘細胞卵子複合体の体外培養系に応用し, 40%以上の卵子が体外受精により移植可能な胚盤胞期胚へ発生する新規体外培養系を開発した(Kawashima, et.al., Reproduction, 2008). これらの成果は, 排卵期特有の遺伝子発現解析が, 排卵機構の解明のみ成らず, 体外培養系や体外受精系の改善につながることを示しており, マイクロアレイ解析の結果, 発現上昇, 減少が認められた500以上の遺伝子について, 個々の詳細な検討が今後必要であると考えられた.
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