2006 Fiscal Year Annual Research Report
ネコゲノム解析による造血系腫瘍の発症機構解明とその臨床応用への展開
Project/Area Number |
18688018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤野 泰人 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助手 (70401180)
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Keywords | ネコゴノム / リンパ・造血系腫瘍 / 染色体解析 / レトロウイルス / FeLV / 遺伝子再構成 / クローナリティ / CIS |
Research Abstract |
本研究では分子細胞遺伝学および分子生物学的手法を用いたネコゲノム解析により、造血系腫瘍における分子病態の解明および小動物臨床への応用を目的として、これまでに以下のような研究を行っている。 1.猫の造血系腫瘍における染色体異常および関連する遺伝子の解析 外来性FeLVプロウイルスゲノムDNAをニックトランスレーション法によりビオチン化しプローブとして用い、正常ネコ末梢血単核球およびFeLV感染猫リンパ系腫瘍であるFL-74、FT-1およびKO-1細胞株の染色体標本を作製しFISH法を行った。その結果、正常ネコ染色体標本では特異的なシグナルは検出されなかったが、腫瘍細胞株から作製した染色体標本では、いずれにおいても6カ所の有意な陽性シグナルが検出された。DAPI重染色によるネコQバンドの核型を解析したところ、FL-74ではB2p15-p14、B2q11、D1p14、E1p14-p13、E1q12、およびF2q16の座位にシグナルが観察された。FL-74は核型解析によりD1単腕に異常がみられ、その異常座位にシグナルが認められた。また、FT-1では、A2p23-p22、B2p15-p14、B4p15-p14、D4q23-q24、E1p14-p13、およびE2p13-p12の座位に、また、KO-1ではA2p22、A3q22、B1p13、B1q13、D1p13、およびD3p15-p14の座位に有意なシグナルが観察された。外来性FeLV特異的なLTRU3プローブを用いたサザンプロット解析を行った結果、FL-74、FT-1およびKO-1細胞にはそれぞれ6コピーのFeLVプロウイルスが組み込まれていることが示され、FISH法によって同定された座位の数と一致していた。これまでのネコにおける細胞遺伝学的研究成果と本研究における成果を比較した結果、FISH法によってFeLVプロウイルスゲノムが検出された染色体には、多くの腫瘍関連遺伝子が座位しており、それらが腫瘍発生に関与している可能性が考えられた。A2染色体にはFT-1およびKO-1の2細胞株において、またB2染色体にはFL-74およびFT-1の2細胞株において同じ座位のシグナルが認められ、それらの部位にFeLVの共通組み込み部位が存在していることが予想された。今後、これらの座位に存在する遺伝子を特定することにより、リンパ系腫瘍発生の分子機構解明の進展が可能となると考えられた。
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Research Products
(3 results)