2006 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファチジルイノシトール二リン酸代謝系の生理的、病態生理的意義に関する研究
Project/Area Number |
18689003
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐々木 雄彦 秋田大学, 医学部, 教授 (50333365)
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Keywords | イノシトールリン脂質 / 遺伝子改変マウス / 好中球 / 炎症 |
Research Abstract |
イノシトールリン脂質(PIs)は生体膜構成成分であるのみならず、細胞内シグナル分子として機能する。本研究では、PIsの中でも特に、イノシトール環水酸基に二ヶ所のリン酸化を受けたホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)に着目した解析を行っている。PIP2の生成や分解を担う酵素(PIP2代謝酵素)の生理機能を紐解くとともに、ヒト疾患・病態の理解に繋がる知見を得ることを目的とする。PI(3,4)P2とPI(3,5)P2に特に焦点を絞り、解析を進めた。今年度の研究では、PI(3,4,5)P3からPI(3,4)P2への変換を司るSrc homology 2(SH2) domain containing inositol-5-phosphatase 1(SHIP1)(SHIP1)についての興味深い知見が得られた。血液中の白血球の大半を占める好中球は化学走性に優れた細胞であり、自然免疫系を支えている。生体への細菌や真菌の侵襲後、第一に好中球が化学走性によって遊走、集積する。先天性の好中球機能不全は易感染状態を招く。一方で、好中球の過剰な集積と活性化は組織傷害の要因となり、生体に不利益をもたらす。今年度の研究で、SHIP1が好中球、また、マクロファージの遊走の重要な調節因子であることを見出した。ship1^<-/->(SHIP1欠損)好中球は、正確な方向に遊走したが、その速度は著しく低下していた。この遊走障害は、基質であるPI(3,4,5)P3の生成を阻害した場合には見られなかったことから、PI(3,4,5)P3からPI(3,4)P2への変換反応が遊走調節の重要な過程であることが明らかとなった。これらは、炎症の生理と病理を理解するうえで重要な知見である。
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Research Products
(7 results)