2008 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファチジルイノシトール二リン酸代謝系の生理的、病態生理的意義に関する研究
Project/Area Number |
18689003
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐々木 雄彦 Akita University, 医学部, 教授 (50333365)
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Keywords | 脂質 / 胚発生 / 免疫 / 神経 |
Research Abstract |
イノシトールリン脂質は生体膜構成成分であるのみならず、細胞内シグナル分子として機能する。本研究では、イノシトールリン脂質の中でも特に、イノシトール環水酸基に二ヶ所のリン酸化を受けたホスファチジルイノシトールニリン酸(PIP2)に着目した解析を行っている。PIP2の生成や分解を担う酵素(PIP2代謝酵素)の生理機能を紐解くとともに、ヒト疾患・病態の理解に繋がる知見を得ることを目的とする。PI(3, 4)P2とPI(3, 5)P2に特に焦点を絞り、解析を進めた。生理機能不明な酵素の研究に最も有用な方法の一つは、遺伝子欠損マウスの樹立と表現型解析である。昨年度までの研究で、PI(3, 4)P2とPI(3, 5)P2の代謝を司る酵素の遺伝子欠損マウスのいくつかは、胚発生に必須であることを見出した。胎生期にこれらの酵素が担う役割の一部が本年度の研究で明らかになった。また、このような酵素の成体での生理機能を明らかにするために、臓器、組織特異的に酵素を欠損する遺伝子改変マウスを多数得ることができた。これまで、PI(3, 4)P2は強力なセカンドメッセンジャーであるPI(3, 4, 5)P3の分解産物であり、特異的な生理機能をもたないものと考えられてきた。上記のマウスを用いた表現型解析によって、PI(3, 4)P2が、神経系、免疫系、また発癌に関わることを見出した。さらに、PI(3, 5)P2の生成、分解を触媒する酵素が、上皮細胞、神経細胞において果たす役割を新たに見出した。これらについては残念ながら論文として公表するに至っていないが、一流科学誌に近く発表し、新規の知見を世界に向けて発信したい。
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