2007 Fiscal Year Annual Research Report
免疫細胞の体内動態制御法の確立とその癌免疫療法への応用に関する研究
Project/Area Number |
18689007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 直貴 Osaka University, 薬学研究科, 講師 (90312123)
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Keywords | 遺伝子 / 癌 / 細胞・組織 / 生体分子 / 免疫学 |
Research Abstract |
本研究は、腫瘍免疫において重要な機能を担っている樹状細胞(DC)や細胞傷害性T細胞(CTL)の生体内動態を制御しうる基盤テクノロジーを構築し、この"Cell Delivery System"ともいうべき概念を導入した新規癌免疫療法の開発を目的に遂行された。本年度は、一本鎖抗体(scFv)発現系を応用してCTLの体内動態(腫瘍集積性)を改善する方法論の確立とその癌免疫療法における有用性を解析し、以下の成果を得た。 1.腫瘍新生血管に特異的かつ豊富に発現しているflk-1を標的分子として選択し、抗fik-1scFvと細胞膜貫通ドメインの融合蛋白質を発現するレトロウイルスベクターを作製した。本ベクターで遺伝子導入したCTLでは、細胞表面に機能的な抗fik-1 scFvを発現していることが確認され、担癌マウスに静脈内投与した際にはコントロールCTLと比較して腫瘍集積性が約3倍向上するとともに、抗腫瘍効果の大幅な増強が認められた。 2.上記(i)の成果を踏まえて、抗fik-1 scFvにCD3分子とCD28分子の細胞内シグナル伝達ドメインを結合したキメラ抗原レセプターを発現するCTLを創製した。この改変CTLは、flk-1発現細胞を特異的に傷害する活性を有しており、担癌マウスに静脈内投与すると、腫瘍集積性が向上するのみならず腫瘍血管傷害による劇的な腫瘍退縮をも達成できることが明らかとなった。 これらの成果により、抗flk-1 scFvを細胞表面に発現させるアプローチが、細胞医薬への腫瘍ターゲティング能の付与に極めて有用であり、さらにscFvに細胞内シグナル伝達ドメインを融合させたキメラレセプターの応用が、標的分子に応答した細胞医薬の機能制御をも可能にすることを実証できた。今後は、本研究での基盤技術を活かした新規癌免疫療法の確立に向けて、詳細な作用機構の解明や安全性の評価を図っていく予定である。
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