Research Abstract |
1.本研究の目的は「自発運動開始時の圧反射性血圧調節の抑制における,中枢と末梢の役割を明らかにすること」である。本年度は,これにはvasopressinの中枢性作用が関与する可能性があるのか,を検証した。 2.Vasopressin V1a受容体欠損(V1a KO)マウスを用いた研究 ・低血液量時の圧反射ゲインの測定: マウスの血液を5分間で約0.4ml引き,急性低血液量状態にし,その際の血圧反射ゲインをphenylephrineの瞬時投与により決定した。正常マウスでは,急性低血液量時に血圧反射ゲインが亢進し,血圧が維持されたのに対して,V1a KOマウスでは,この反応が消滅し,むしろ低血液量時に血圧反射ゲインが減弱し血圧が大きく低下すること,が示唆された。 ・代謝量の24時間連続測定 :小動物のマウスで代謝測定に成功した。その結果,正常マウスでは夜間活動期には安静時であっても代謝量が上昇し,常に運動開始の準備状態にあること,が示唆された。一方,V1a KOマウスでは,夜間活動期の代謝量の上昇が減弱しでいること,が示唆された。 3.ヒトを用いた研究 中高年のスポーツ教室,「松本市熟年体育大学」の参加者を対象に,vasopressin V1a受容体のC/T(Phe136Phe)多型は高齢男性の代謝因子と血圧に影響するか,もしそうならば,その差はインターバル速歩トレーニングによって変化するかを検討した。その結果,トレーニング前の体格指数と拡張期血圧は,CC群と比較してTT群で高い傾向を示した。一方,CC,CT,TT群で期間中のトレーニング量は同じであったにもかかわらず,遺伝子多型によって見られた初期値の差はトレーニング後に消滅する傾向が観察された。
|