2006 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性メディエータとしての遊離脂肪酸の分子機構の解明と医学応用
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18689022
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
菅波 孝祥 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (50343752)
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Keywords | 飽和脂肪酸 / 多価不飽和脂肪酸 / 炎症 / Toll-like receptor 4 / 脂肪細胞 / マクロファージ / 肥満 / メタボリックシンドローム |
Research Abstract |
炎症性メディエータとしての遊離脂肪酸の意義を明らかにする目的で、以下の検討を行った。 1.TLR4の内因性リガンドとしての遊離脂肪酸の意義:我々が独自に構築した脂肪細胞とマクロファージの共培養系において、マクロファージに由来するTNF-αが脂肪細胞の脂肪分解を促進し、遊離した脂肪酸(特に、飽和脂肪酸)がマクロファージのTLR4/NF-κB系を介してTNF-α産生をさらに増強することにより、脂肪組織の炎症性変化(炎症性サイトカイン産生増加と抗炎症性サイトカイン産生減少)が増悪する一種のvicious cycleが示唆された(Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.27:84-91,2007)。実際、TLR4シグナルを欠損するC3H/HeJマウスでは、高脂肪食負荷による体重や脂肪組織重量の増加は対照野生型マウスとほぼ同等であったが、脂肪組織の炎症性変化や全身の糖代謝は有意な改善を認め、遊離脂肪酸の血中濃度も低値であったくBiochem.Biophys.Res.Commun.354:45-49,2007)。以上の結果より、TLR4は、メタボリックシンドロームにおいて代謝と炎症を繋ぐ鍵分子である可能性が示唆された。 2.遊離脂肪酸の産性調節や機能に関わる分子のスクリーニング:上述の共培養系および肥満動物の脂肪組織のDNAマイクロアレイ解析により、遊離脂肪酸の産生調節や機能に関わる分子のスクリーニングを施行し、脂肪細胞に特異的な58遺伝子とマクロファージに特異的な5遺伝子を同定した。現在、培養細胞における過剰発現系やknock-down系を作製し、細胞機能に及ぼす影響を検討じている。 3.n-3系多価不飽和脂肪酸によるメタボリックシンドローム効果の分子機構の解明:現在既に高脂血症治療薬として臨床応用されているEPA製剤をメタボリックシンドローム患者に投与して、動脈硬化関連パラメーターの変化を検討したところ、sdLDLやCRPの有意な改善を認めた(Diabetes Care 30:144-146,2007)。この分子機構を明らかにするために、遺伝性肥満ob/obマウスに対してEPA製剤を投与したところ、動脈硬化抑制に作用するアディポネクチン血中濃度の上昇を認めた。
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