2008 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌の免疫逃避機構の解明 : HLA発現異常の面から
Project/Area Number |
18689035
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
市来 嘉伸 University of Occupational and Environmental Health, Japan, 医学部, 助教 (80419837)
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Keywords | 抗原 / 腫瘍免疫 / 細胞性免疫 / 免疫逃避機構 |
Research Abstract |
癌細胞の免疫監視機構からのエスケープメカニズムとしてHLA cLAss I分子の発現欠失が知られており、欠失したHLA cLAss I分子には免疫原性の強い抗原が提示されている可能性が考えられる。当科で樹立した肺癌細胞株においても、27株中9株(33%)にHLA haplotype loss、27株中3株(11.1%)にHLA total lossを認めている。今回、日本人に多いHLA-A24, B52, Cw12をhaplotype lossした肺癌細胞において、欠失したそれぞれのHLAを再構築し、その細胞性免疫応答について比較解析した。 肺腺癌患者G821(HLA-A24/A26, B52/51, Cw12/14)より樹立した肺癌細胞株G821L(HLA-A26, B51, Cw14)はHLA cLAss I分子のhaplotype lossを有していた。欠失したHLA-A24, B52, Cw12を自己B細胞よりcloningし、自己腫瘍細胞株G821Lに移入し、それぞれのHLA移入株を樹立した。自己所属リンパ節リンパ球より調整したCD8+T細胞を、それぞれのHLA移入株を用いて刺激培養したところ、いずれのHLA移入株においてもHLA移入株をG821Lより認識するCTLを誘導可能であった。そのprecusor CTL frequencyは、A24,B52,Cw12移入株それぞれに対して1/5×10^5, 1/1.5×10^5, 1/6×10^5であった。G821Lに対するfrequency1/4×10^5と比較し、HLA-B52移入株に対するprecursor CTL frequencyがやや高い傾向を認めた。HLA haplotype lossを伴う肺癌症例において、欠失したHLAに提示される抗原を認識するCTLが存在した。現在、これらのHLA移入株特異的CTLをcloning中である。樹立したCTL cloneをプローブとして、cDNA expression cloning法(G821L由来1.5×10^5cDNA library)を用いて、腫瘍抗原の同定を行っていく予定である。 また、肺大細胞癌患者C831(HLA-A2/A26, B7/35, Cw7/8)より樹立したC831LはHLA total lossを認めた。C831Lのb2 microgloblin発現を解析したところ、b2 microgloblinが欠失しており、これを移入することでHLA cLAss I分子が細胞表面に発現することが確認した。C831L b2 microgloblin移入株を用いて、CTL cloneを誘導したところ、b2microgloblin移入株特異的HLA-A2拘束性CTL cloneを樹立できた。このCTL cloneを用いて、cDNA expression cloning法を行ったところ、腫瘍抗原を同定できた。この欠失したHLAに提示される腫瘍抗原の解析も行っていく。
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