Research Abstract |
平成18年度は,双線形写像に用いた暗号プロトコルの提案,および,IDに基づく暗号系の適切なパラメタ評価を行った. 双線形写像を用いた暗号プロトコルとして,墨塗り署名を取り上げ,研究を行った.まず,既存の双線形写像に基づく墨塗り署名方式に対して,その安全性を検証した.この方式は,墨塗り処理が適切に行われているかの検証に,双線形写像の応用の一つであるaggregate署名の技術を用いている,その結果,いくつかの攻撃に対して脆弱であることを明らかにした.また,その脆弱性を回避した方式を提案した.ついで,新たな墨塗り署名方式を提案した.この墨塗り署名においては,通常の墨塗りの役割の他に,部分的に完全にメッセージを消す,削除署名の役割を同時に持つ方式となっているというところに特徴がある.より具体的には,若干,署名長は長くなるものの,多くの機能(墨塗りをした後に,その箇所を削除できる等)を有する方式を提案している. 一般にIDに基づく暗号は,双線形写像を用いて構成されるが,その一方で,Maurer-Yacobi法と通常呼ばれる方式も存在する.この方式は,ユーザの秘密鍵の生成に要する計算時間が膨大になりうるという性質があった.今回の研究成果では,適切にパラメタ設定をすることにより,Maurer-Yacobi法は,十分に実用的になりうることを指摘した.この研究は,双線形写像に基づく暗号プロトコルを正確に評価する上での対比を行う上で重要である.
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