Research Abstract |
画像の高解像度化を論じる状況には大別して,着目物体が1枚の画像にのみ撮影されている場合と,複数の画像に撮影されている場合がある.前者は高解像度化に用いることができるデータが少ないので,高品質の画像を期待することは難しいが,常時生じている状況であるので,実用上極めて重要な場面である.一方,後者が生じた場合には利用可能データが多いので高品質の画像生成を期待できることになるが,このためには複数の低解像度画像間の位置合わせを正確に行なうことが重要になる.本研究では本年度,これら2種類の状況に対して,グレースケール画像の高解像度化アルゴリズムを提案してきた.まず,基礎理論として,特定成分を完全再構成できる標本化定理を提案した.これにより,特定成分を適切に設定することにより,高い精度での連続信号再構成が可能になった.次に,この成果を単一画像からの高解像度化に適用した.DCT基底の低周波成分やエッジ画像を特定成分に採用することにより,高精度の拡大を行なうアルゴリズムを提案した.また,複数画像からの高解像度化に対しても,標本化定理の成果を活用した.まず,画像間の位置合わせを行なうアルゴリズムを提案した.従来法の位相限定相関法では,観測範囲のずれの問題により,原理的に推定誤差が生じてしまう.これを補正しようとするアルゴリズムも存在するが,限界がある.本研究では,DCTと有限区間フーリエ変換を用いることにより,原理的誤差を生じない,新しい位置合わせアルゴリズムを提案した.こうして得られた位置合わせ情報を基にして,低解像度画像の周辺画素のみを用いて高解像度化を行なうアルゴリズムを提案した.これらのアルゴリズムに対して,パソコンで生成した画像データを用いたシミュレーションを行なった結果,0.01%以下の精度で位置合わせパラメータを推定でき,かつ高精度の高解像度画像を生成できることを確認した.
|