Research Abstract |
本研究は,人と人のコミュニケーション成立条件の数理的理解に向けての基礎研究である.生物の生存に不可欠な実時間情報処理とコミュニケーションとが密接に関係していることに着目し,実時間情報処理の数理的本質を理解することを目的とする.本年度の成果は以下の通りである. 1.前年度に構築した協調追跡運動実験装置で,円運動に関する実験を行った.基準円運動の周波数を0.3,0.5,0.7,0.9Hzの4種類に実験参加者への追跡方針条件として,Reactive条件(相手に正確にあわせる),Anticipatory条件(相手より先に進む),Eye-Fixation条件(円中心を注視する)の3種類,計12種類の実験条件を設定した. 2.円運動に対する位相に着目し,位相速度のスペクトル解析を行った結果,基準周波数が大きくなると位相速度にリズムが生じ,かつ,その成分は強くなることがわかった.追跡条件の比較では,Eye-Fixation条件〉Anticipatory条件〉〉Reactive条件のような結果となった. 3.二者間の位相速度相互相関を求めると,位相速度にリズムがある場合に,二者間の相関がよくなる結果となり,さらに,リズム成分の大きさと相関の良さには,強い相関があることがわかった. 4.上記の実験結果を再現し,そのメカニズムを調査するため,現在,手動運動速度にリズムを生じると,環境に比する先行性が現れるかどうかを検討している.眼球運動の非対称による感覚情報の制限をモデルに付加することで,これらのことが再現できる予備的な結果は得られている. 5.手動運動モデルの精緻化のため,手動運動の筋活動解析を行い,複数筋にまたがって特定の時間パタンで活動する少数個の筋活動シナジーで計測筋活動を表現できる結果が得られた.
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