2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18700209
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹中 毅 東京大学, 人工物工学研究センター, 寄付研究部門教員 (70396802)
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Keywords | 感性情報学 / 実験系心理学 / 認知科学 / 音楽心理学 / 創発 / 自動作曲 |
Research Abstract |
本研究の目的は,音楽が人間の生理学的・認知的特性に基づいてどのように発生し,発展するかという問題を,創発的視点から捉え明らかにすること,及び音の相互作用に着目した新たな音楽設計原理を用いて今までにない新しい音楽を創出することである. 楽音をエージェントとし、強化学習を用いたマルチエージェントシステムを構築し、シミュレーションを通して様々な音楽構造を得るとともに、それらを刺激とした心理学聴取実験、既存の音楽理論との比較、計算機実験と同条件下で創作された音楽家による作品との比較、及び本システムを用いた音楽作品の創作を行った。18年度の主な成果を以下に示す. 1、感覚的協和理論や記憶など人間の音楽認知に関わる評価関数を独自に設計し、マルチエージェント学習を用いたシミュレーションシステムを構築した. 2、シミュレーション結果から、感覚的協和と短期記憶を想定したモデルにおいて、いくつかの音律から音階が形成される過程や調性的秩序の発現を確認した.また聴取実験の結果から「親しみやすさ」や「響きの明確さ」と関係するシステムの評価関数を明らかにした。 3、シミュレーション結果と既存の音楽理論(機能和声法など)との比較を通して、実際の音楽で広く用いられている和声進行やカデンツ(終止形)の認知心理学的根拠を示すとともに、新しい音楽理論の構築可能性を議論した. 4、西洋音楽理論にはない日本の民族的な旋法音楽に着目し、中心音やゲシュタルト理論などを用いた、新しい旋律生成モデルを構築し、既存の民族音楽との比較及び聴取実験を行った。 5、計算機実験と同じ制約の下で、数名の音楽家に3声の音楽作品の創作を依頼し、シミュレーション結果と比較した。結果、和声的な類似点と人間の創作における意図的な特徴を明らかにした。 6、上記に用いたシステムの作曲支援への応用を目指し、実験的にいくつかの音楽作品を制作した。
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Research Products
(9 results)