2007 Fiscal Year Annual Research Report
マスキング効果を利用した知的作業のための音環境デザイン
Project/Area Number |
18700217
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
為末 隆弘 Shinshu University, 工学部, 助教 (00390451)
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Keywords | 音環境 / 知的精神作業 / マスキング効果 / 有意味雑音 / 無意味雑音 / 心理評価 / うるささ / 作業成績 |
Research Abstract |
これまでに,知的作業空間内に存在する有意味雑音をそれとは異なる別の音でマスクするといった音を積極的に活用した雑音対策手法の有効性を確認した。しかしながらこれらは,マスクキング音を定常音に限定しており,音楽や自然音等の変動音を用いた場合については検討していない。本研究では,上述の雑音対策手法を長時間にわたる知的精神作業時に適用した場合の作業者のうるささ,心地よさ,好み等の心理的評価値がどのように変化するか,さらには上記に起因して作業成績がどの程度となるかを考察することを目的とし,下記のようなマスキングの効果に対する生理学的側面からの初期的なアプローチを行った。 1.聴覚に関連する様々な生理学的指標を調査・整理し,音環境評価に有効であると思われる脳波の測定を試みた。国際10-20法に従って作業者の頭皮上に皿電極を配置し,音環境下で脳波のリアルタイム計測・解析が可能なPCをベースとしたシステムをグラフィック型プログラミング言語LabVIEW(National instrument社)を用いて構築した。解析に当たり,自律的・背景的な電位変動である脳波のα波成分や前頭正中部θ波(Fmθ)成分など,さらにはN1,P1,N2,P2,P3a,P3bや頭頂部緩反応(SVR)などの中潜時・長潜時の聴覚誘発電位・事象関連電位に注目して,作業時に有意味雑音を「聞き流そうとしている」状態において,定常音または音楽・自然音等の変動音をマスキング音として放射した場合の脳波解析を行った。 2.複数の被験者に対して上記の測定を行った結果,雑音の有意味性の違いにより前頭正中部におけるθ波に差異がみられ,主観的な心理評価結果との対応から,これらが知的精神作業への集中度や没頭と関係していると推察された。マスキングによって有意味雑音を無意味雑音に質的変化させ得ることの可能性の一端が認められた。
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