Research Abstract |
本研究課題で対象とする有歪圧縮は, 現代の通信にとって不可欠な技術となっている. 有歪圧縮は, 主に画像や音声を対象に歪みを許容する代わりに高圧縮を目的とした圧縮方法である. 有歪圧縮では, 許容する歪に対してどの程度まで情報が圧縮できるかという限界が理論的に示されている. 今年度は, LDGM符号に基づく有歪圧縮法について, 用いる生成行列の重みによって, 圧縮の性能がどのように変化するかを, レプリカ法を用いて理論的に評価した.また, 木構造パーセプトロンを用いた有歪圧縮方法の性能を解析的に評価し, シャノン限界を達成することを示した. 加えて, ダイナミクス評価の基礎的な検討のために数理的に似た構造をもつHopfieldモデルのダイナミクスを経路積分法によって解析した. この成果は, それぞれPhysical ReviewE, Joumal of Physics A : Mathematical and General, Journal of the Physical Society of Japanに掲載されている. LDGM符号に基づく有歪圧縮では, 疎グラフ上のダイナミクスを解析することが不可欠であるが, 任意の次数分布を持つ疎グラフ上のダイナミクスを経路積分法で解析し, LDGM符号へ適用した. これらの成果は, それぞれ日本物理学会, 2009 IEEE Intl Sympo on Information Theory (ISIT2009) で発表または発表予定である. また, Journal of Physics A : Mathematical and Theoreticalへ投稿準備中である. 今年度の成果から, さまざまな次数分布を持つ疎グラフ上のダイナミクスの解析を経路積分法で厳密に解析する方法を示した. これにより, 既存の近似的解析手法の妥当性についても, 詳細な議論が可能となった. LDGM符号へ適用した. 有歪圧縮の解析についても現在, 投稿準備中である.
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