Research Abstract |
研究者の論文生産性と研究協力ネットワーク上での役割・重要度の相関に関して,分野ごとの特性を明らかにすることを目的として,平成18年度は,まず,論文の書誌データベースからデータの抽出・整形を進めた。具体的には,Thomson ISIのScience Citation Index(SCI)データベースのCD-ROM版の,1995年版から2004年版までの10年分を情報源として用い,論文生産性および共著関係の情報を抽出した。抽出したフィールドは,論文名,著者名(共著者リスト),著者の所属機関の名称・所在地,掲載誌名,出版年,アブストラクト,キーワードである。そして,SCIの主題カテゴリ別収載誌一覧を利用して,分野の区分と分野ごとのコアジャーナルを決定した。 また,特に,時系列に着目したネットワーク分析を行い,研究者のネットワーク上の特性などが共著相手のその後の論文生産性に与える影響について調査した。具体的には,計算機科学分野の新規参入者を対象に,共著相手の過去の研究活動実績(発表論文数・ネットワーク上の重要度)と,新規参入者のその後の発表論文数との関連を調べた。その結果,計算機科学分野では, 1 共著相手の過去実績と,新規参入者のその後の論文数との相関は認められないこと 2 ただし,参入後も引き続き1編以上論文を発表している研究者と,参入時の1編だけで終わってしまっている研究者を比較すると,前者の方が,共著相手の過去実績が高いこと が明らかになった。このような,研究協力者(指導者)の影響に関する知見を得る分析は,例えば,教育効果(研究者養成を目的とした教育の効果)の予測にも活用できるという点でも意義を持つと考えられる。この成果の一部については既に研究発表を行っている。
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