Research Abstract |
本研究では,手作業の熟練過程における視覚と体性感覚による運動認知のダイナミックなメカニズムを心理物理実験により明らかにすることを目的としている.平成18年度は,運動認知における異種感覚の協調・競合メカニズムと,異種感覚からの運動認知が手作業に与える効果を明らかにする計画となっていた.本年度は,研究実施計画の初年度であったため,実験装置の設置と作成に多くの時間を費やした.実験装置には,力覚刺激呈示装置を新規導入した.この装置は,被験者がアームの先端を手でつかみ,その先端で仮想物体に触れることができ,触感覚がフィードバックされるシステムである.本研究では,視覚と体性感覚の協調・競合特性を測ることが目的であったため,視覚と体性感覚の情報呈示位置が一致している状況が望ましい.そこで,視覚ディスプレイには,Reachinディスプレイを導入することで,この状況を実現した.このディスプレイは,液晶シャッターメガネにより立体画像を呈示することができる.また,ハーフミラーを通して刺激を呈示するので,視覚と体性感覚に呈示する刺激の3次元空間位置を一致させることができる.さらに,このシステム上で動きの視覚刺激を呈示するために,CGソフトにより,そのような刺激を作成し,その後,作成した刺激をReachinディスプレイの開発環境に読み込ませる.本年度は,この装置を利用するためのノウハウを蓄積することができたため,来年度からはより充実したデータを収集できると考えている.また,装置開発と並行して,手の動作と関連させて利用できるような視覚運動刺激を作成し,本研究に関連する予備的な心理物理実験も行った.この実験では,プラッド運動と呼ばれる運動刺激を用い,行動指標と知覚指標を同時に運動方向で計測できることを示し,この運動刺激を使えば,行動指標となる手の動作と視覚による知覚指標を同時計測できることが示唆された.
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