2007 Fiscal Year Annual Research Report
手作業の熟練過程における運動認知の異種感覚協調性のダイナミクス
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18700253
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松宮 一道 Tohoku University, 電気通信研究所, 助教 (90395103)
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Keywords | 認知科学 / バーチャルリアリティ / マルチモーダルインターフェース / 実験系心理学 / 行動学 |
Research Abstract |
本研究では,運動認知における異種感覚の協調・競合メカニズムと,異種感覚からの運動認知が手作業に与える効果を明らかにすることを目的としていた.異種感覚の協調特性を明らかにするために,手の動きにより生じる触運動感覚が視覚運動残効にどのような影響を与えるかを調べた.視覚刺激は正弦波状に輝度変調された縞状円盤で,触覚刺激は手に持ったペンを通して与えられた.順応期間では,被験者は円を描くように手に持ったペンを20秒間回転し続け,視覚刺激は被験者の手の動きに合わせて回転した.順応後,被験者は手の動きを止めて静止した視覚刺激を観察し運動残効持続時間を応答した.その結果,手と視覚刺激の運動速度と運動方向が一致するときに残効時間が増大し,両者の運動方向が反対方向であるときには残効時間は減少した.これは,運動知覚において視覚刺激と体性感覚刺激が協調的・競合的に作用することを示唆している.これまで視覚運動残効による異種感覚統合の現象は報告されていなかった.運動残効は脳内の神経機構からの出力を反映したものであるため,運動知覚における異種感覚統合が脳内神経機構内に存在することを本研究は示唆するものであり,その意義は極めて大きいと考えている.また,視覚的な運動物体を手で追跡する作業を行ったときの視覚運動変換のずれへの適応性について調べた.手の位置に関する視覚フィードバック情報が実際の手の位置とずれていると,最初はそのようなずれに困惑するが,練習することでそのずれに適応することができる.本研究では,視覚フィードバック情報のずれの気づきが視覚運動変換の適応に影響を与えるかどうかを調べ,視覚フィードバック情報と実際の手の位置のずれに気づかない条件と比べて,そのずれに気づくときに,視覚運動変換の順応による残効効果が小さくなることが示された.
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