2006 Fiscal Year Annual Research Report
主語の情報連鎖機能と談話構造に関する研究-歴史英語から見た言語進化-
Project/Area Number |
18700263
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
柴崎 礼士郎 沖縄国際大学, 総合文化学部, 准教授 (50412854)
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Keywords | 英語学 / 言語類型論 / 談話分析 / 認知科学 / 歴史言語学 / 情報 |
Research Abstract |
平成18年度は、本研究の中心課題3点の内、第一の課題である「主語が担う「情報距離」の歴史的考察」を中心に研究を進めてきた。科学研究費補助金の交付を受ける前に進めていた研究成果では、以下の点が確認されている。古英語(12世紀中庸まで)と中英語(15世紀まで)においては、主語の指示対象を談話上に見出すことが可能であるが、特定の文法役割との相関関係は見出せない。しかし、現代英語では、主語の指示対象は直前の節の主語の場合が圧倒的である。こうした研究成果に基づき、主語の「情報距離の近接化」が通時的観点から段階的に起こっていると作業仮説を立て、その検証を統計的・言語学的に行った結果、予想通りの言語変化を見出すことができた。 本年度は、主語の指す情報距離の近接化を、形式面との関わりで考察する予定である。英語において主語の取ることができる言語形式には、一般に「名詞形」と「代名詞形」がある。通時的にみると、15世紀頃から主語は代名詞形を好むようになるが、そうした主語は2〜5節ほど前の情報を指している。しかし、20世紀になると、代名詞形を取る主語は直前の節の情報を指すようになっている。こうした主語の言語形式と情報距離の相関関係を歴史的に考察するのである。既に、調査研究を進めているが、更に詳細に、言語学的・統計的に調べる予定である。また、主語の指す「情報距離の近接化」は、英語だけに見られる変化ではないことも、他言語の調査から分ってきた。本年度は、英語に焦点をあてながら、日本語とディダ語(西アフリカ)にも視野を広げ、汎言語的な主語の情報連鎖機能の可能性を追求したい。
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