2007 Fiscal Year Annual Research Report
主語の情報連鎖機能と談話構造に関する研究-歴史英語から見た言語進化-
Project/Area Number |
18700263
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
柴崎 礼士郎 Okinawa International University, 総合文化学部, 准教授 (50412854)
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Keywords | 言語学 / 英語 / 認知科学 / 外国語 / 情報処理 / 語用論 / 談話研究 / 言語類型論 |
Research Abstract |
平成19年度前半は、前年度に引き続き、主語の情報連鎖機能を古英語から現代英語、特にイギリス演劇を資料に調査・研究した。本調査研究を行う過程で、英語だけではなく他言語でも同様の歴史的変化を確認でき、通時的・通言語的変化の可能性を追求してきた。研究者(柴崎)は、自身の研究言語の一つである西アフリカの「ディダ語」の語りを分析し、主語の情報連鎖に同様の機能を確認し論文として発表した。また、情報連鎖は特定の構文と相関関係があることも確認でき、本年度の研究へ大きく引き継がれている。 平成19年度後半は、英語の歴史において、主語の情報連鎖機能のバランスが崩れる15世紀に注目し、集中的に調査研究を行った。その結果として、以下の点が明らかになった。 1.主語の情報連鎖は、英語の語順変化・固定化(15世紀)に大きく関係している。 2.一度崩れた主語の情報連鎖も、20世紀へ向かって徐々に確実に回復している。 この2点が重要と判断されるのは以下の理由による。先行研究では、語用論的要因が基となって、英語の語順変化・固定化が起こったという見解が一般的である。しかし、語順変化・固定化という構造的変化が起こった結果、主語による情報連鎖に抜本的変化が起こったことが、本研究で統計的に明らかになってきている。つまり、語用論的要因と情報連鎖は別々に取り扱う必要がある。 本年度は、上掲2点を更に掘り下げる計画である。英語の語順変化・固定化との関連で、歴史英語研究だけではなく、認知科学・情報処理面で新たな視点を導入できるものと判断する。特に、語順変化を被ったとされる中国語・アフリカ諸語への示唆は大きいと思われるため、通時的・通言語的言語変化の解明を目指す意向である。
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