2007 Fiscal Year Annual Research Report
認知モジュールと環境要因の相互作用による音声学習の発現過程
Project/Area Number |
18700264
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 美樹 The Institute of Physical and Chemical Research, 生物言語研究チーム, 研究員 (90415216)
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Keywords | ジュウシマツ / 動物行動学 / 鳴禽類 / 音声学習 / 生得的制約 / 種認知 / 家禽化 / 音声解析 |
Research Abstract |
ジュウシマツは中国からインドにかけて生息するコシジロキンパラの家禽種である。日本に約250年前に輸入され、子育て上手な形質が好まれ家禽化された。その結果、繁殖行動だけでなく求愛歌も大きく異なった。ジュウシマツの求愛歌は複雑な遷移規則に従いうたわれるが、原種のコシジロキンパラは定型的な求愛歌をうたう。これまでの研究により、ジュウシマツとコシジロキンパラの歌の違いは、歌学習時の環境の違いだけでなく遺伝的変容を伴っていると思われる。そこで、歌学習を構成する認知モジュールを行動学的に分離し、かつ雑種作出により認知モジュールの生得的基盤をも分離することを目的としてきた。 ジュウシマツとコシジロキンパラの第一世代の里子実験から、コシジロキンパラには歌学習時に強い自種歌選好が働いていることが示唆される結果を得た。そのため、より詳細な行動レベルでの認知モジュール分離を目指し、ジュウシマツやコシジロキンパラの歌を24時間録音、記録するシステムを確立した。これによって、成鳥時の歌の違いだけでなく、発達過程における歌の違いも比較できるようになった。その結果、ジュウシマツの発声頻度が幼鳥期に一時的に増え、徐々に減少していく過程や歌要素の音響特性が急激に(1日から2日程度)で変化することがわかった。発達期は環境の影響を受けるが、最終的には自種特異な歌に戻してしまう鳥(カナリアやミヤマシトド)もいる。このシステムを確立したことで、ジュウシマツとコシジロキンパラの生得的制約の違いを行動レベルで明確にすることが期待できる。 禽舎にジュウシマツのオス、メスを5羽ずついれ、自由繁殖をさせている。そのような環境下でコシジロキンパラのオスが1羽、ジュウシマツとコシジロキンパラの雑種個体2羽が育っている。歌学習時の自種歌への選好や学習の傾向をジュウシマツと比較が期待できる。
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Research Products
(1 results)