2008 Fiscal Year Annual Research Report
脈波データに対するカオス時系列解析法の開発及び脈波のカオス性と動脈硬化との関連
Project/Area Number |
18700270
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
米本 孝二 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 研究員 (90398090)
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Keywords | 埋め込み次元 / 遅延時間 / リヤプノフ指数 / 動脈硬化 / 脈波 / カオス |
Research Abstract |
1.昨年度までに開発した埋め込み次元・遅延時間推定手法およびリヤプノフ指数推定法は計算時間がかかるため、大規模データに適用するために以下のように手法を簡略化した。 (i)遅延時間は自己相関が初めて負の値になる時間ラグを用いる。 (ii)カーネル推定量におけるバンド幅の式の中の定数cを、ある1つの値に固定する。 (iii)従来提案しているリヤプノフ指数の推定では1つのデータに対し、スケルトンの推定およびリヤプノフ指数の推定を20回ほど繰り返し、その平均を最終的な推定値とすることを提案しているが、その繰り返しをせず、1回で得られた推定値をそのまま推定値として用いる。 上記の変更により、大規模データに適用する際の計算時間が大幅に削減することが出来た。 上記手法を平成14年の久山町健診で、脈波データを測定した40歳以上のデータに適用した。 カーネル推定量のバンド幅の定数c=0.1とし、埋め込み次元の推定値として1から10次元の間でCV値が最小となるものを探索し、推定された埋め込み次元・遅延時間の下で、リヤプノフ指数を推定した。年齢とは年齢があがるにつれてカオス性が下がる有意な関連が観測されたものの、血圧、血糖値、コレステロール、脈波伝播速度(PWV)などの動脈硬化関連指標との解析では、有意な関連は観測されなかった。 2.長期追跡データでは、対象者たちがある状態から別の状態に移ることが観測される。その状態に依存して危険因子の影響も変わる。そのことを柔軟に捉えるために、昨年度までに開発したFunctional ANOVAの概念を多状態モデルへ拡張し、久山町研究のデータに適用した。心血管病の既往なし、心血管病発症、死亡の3つの状態の遷移をモデリングし、各遷移により危険因子の影響が異なること、危険因子の影響が柔軟に評価できることを示し、国際シンポジウムにて発表した。
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