2006 Fiscal Year Annual Research Report
逆転写酵素阻害剤によるHIV1薬剤耐性化機序の解明と投薬計画シミュレーターの開発
Project/Area Number |
18700293
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
原田 耕治 豊橋技術科学大学, 工学部, 助教 (40390504)
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Keywords | HIV / 逆転写酵素 / 力学系 / 抗原多様性閾値 / コンピュータシミュレーション |
Research Abstract |
エイズ治療薬の一つとして今も広く使用されているAZTを代表とするヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤は、HIV-1(以後、HIV)のRNAからDNAへの逆転写過程を強く阻害し、一時的にその増殖を抑える一方、数週間から一ヶ月の継続使用により、HIVの薬剤耐性化を急速に促進するという問題を抱えている。本研究課題の目的は、このような現況を鑑み、逆転写酵素阻害剤使用よるHIV薬剤耐性化問題の解決策ついて、理論・応用の両面から検討することにある。本年度は、この問題に理論的側面からアプローチするため、1.モデル構築、及び2.モデル解析を行った。 1.モデル構築 NowakらのHIVロールモデルは、逆転写複製過程を考慮しておらず、その過程に直接作用する逆転写酵素阻害剤の影響を調査するには不十分である。そこで、彼らのモデルに新たにHIVの逆転写複製過程を考慮した非線形数理モデルを提案した。具体的には、1)HIVが逆転写酵素により複製される際、逆転写酵素の複製エラーにより変異すること、2)逆転写酵素の複製対象であるHIV-RNA中に逆転写酵素の遺伝子もコードされていることを考慮し、HIVの変異確率が逆転写の度に変異するモデルを提案した。 2.モデル解析 2.1 提案モデルにて抗原多様性閾値理論が成立することを証明した。抗原多様性閾値理論とは、HIVが変異によりその変異株を増し、ある臨界株数を超えた時、AIDSを発症するとする理論であり、NowakとMayにより提案されたものである。 2.2 抗原多様性閾値理論から導出された閾値が、HIVの最小変異確率と関係していることを明らかにした。 2.3 HIVの最小変異確率に対し、エイズ発症を決定する閾値が存在することを示した。 2.4 2.3で得られた閾値が、HIV特性により決まり、T細胞特性に依存しないことを示した。
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Research Products
(1 results)