2006 Fiscal Year Annual Research Report
初期胚パターン形成のプリミティブモデルの開発と応用
Project/Area Number |
18700300
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
水野 寿朗 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (70336759)
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Keywords | 生体情報 |
Research Abstract |
胞胚〜原腸胚期のパターン形成の問題として三胚葉形成に注目した。両生類胚の予定中胚葉は胞胚の中緯度域にあり、この特異化機構には胚誘導と細胞自律性の二つの考え方がある。胚誘導は、動物極側組織と植物極側組織の外植体の接着(Nieuwkoop結合体)から生じうる異所的な中胚葉性組織を根拠としている。細胞自律性は、予定中胚葉域の外植体や関連する細胞質因子の局在から説明されている。これまで研究代表者らは、ある一次元的な反応拡散型のモデルが正常胚と二つの実験群の中胚葉形成を表現できることを示してきた。このモデルの拡散項は空間的に均一だが、反応項は動植物極軸に沿った細胞密度を反映した連続的な勾配をもつ。ただしこのモデルは、中胚葉形成するまでの挙動が初期値により不安定で、特に動物極付近は摂動に弱い印象があった。線形解析により反応項の定性的性質を調べたところ、正常胚モデルは解の振舞いの異なる三つの領域をもち、そのうち中緯度域は鞍点型の、また動物極側は結節型の不安定性を持つことが確認された。中緯度域の不安定性は細胞自律的な中胚葉形成に、また動物極側の不安定性はNieuwkoop結合体の胚誘導に対する反応能に寄与すると思われた。胚誘導と細胞自律性という二つの冗長なメカニズムが、ひとつの連続的な勾配から導き出される点が興味深い。一方、モデルに見られた動物極側の摂動に対する弱さもまた不安定性の帰結として理解できるが、実証的な観点からするとこの不安定性の問題はモデルの弱点である。しかし実際の胞胚が二次元球面に近い形状であることを考慮すると、動物極付近の面積は赤道域に比べ相対的に狭いため過度の不安定性は抑制され、不自然な挙動を解決できる可能性がある。そのため動物極付近の性質は個々のモデルの価値を評価するうえで重要と考えられる。これらの知見をふまえ現在、二次元モデルの準備を継続中である。
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