2006 Fiscal Year Annual Research Report
シナプスにおけるNMDA受容体サブユニットソーティング機構とその生理的意義の解明
Project/Area Number |
18700304
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
明石 馨 新潟大学, 脳研究所, 産学官連携研究員 (30374713)
|
Keywords | 脳・神経 / NMDA受容体 / シナプス / マウス |
Research Abstract |
これまでの研究で作製した海馬CA3選択的NMDA受容体GluRε2ノックアウトマウス(CA3-GluRε2KO)の知見から(論文作成中)、GluRε2はGluRε1では代償が出来ず、海馬CA3シナプスにおいてNMDA受容体が機能を持つ上で不可欠な分子である事が示唆されている。この現象の背景にある分子メカニズムを明らかにすることを目的として次の研究を進めている。 CA3-GluRε2KOマウスのCA3ホモジネートサンプルでは、ε1が野生型マウスと同程度存在しているにも関わらず、全てのCA3シナプスにおいてNMDA受容体応答がほぼ消失していた。この原因としてε1/ζ1のシナプスへの局在の変化を想定し、免疫電顕を行った。その結果、ζ1のシグナルは減少していたものの(野生型マウスの1/3程度)、ε1、PSD-95のシグナルには変化がなく、ε1/ζ1はシナプス部位に存在していることが分かった。ところが、CA3のPSD画分を用いた生化学的解析を行ったところ、ε1、PSD-95が大きく減少していた(いずれも野生型マウスの1/2程度)。この減少は、PSD画分抽出時に使用するTritonX-100への溶解度の変化を反映していると考えられ、ε1、PSD-95といった分子が生化学的に脆弱になっていることを意味している。それに対し、GluRε1KOマウスのPSD画分中のε2には変化が無かった。これらのことからGluRε2KO特異的に、CA3シナプスのPSD蛋白複合体の構造が変化している可能性が示唆された。 以上より、海馬CA3シナプスにおいてGluRε2はNMDA受容体が機能を持つ上で必須なサブユニットであると同時に、GluRε2を含むNMDA受容体シグナルがPSD蛋白複合体構造の安定性にも関与している可能性が示唆されてきた。さらに現在、シナプス骨格系の分子にも変化があるか調べているところである。
|