2007 Fiscal Year Annual Research Report
Cross-modal可塑性における代謝型グルタミン酸受容体の役割の解明
Project/Area Number |
18700317
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田川 義晃 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 助教 (50303813)
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Keywords | 脳神経 / 発達 / 視覚 / グルタミン酸受容体 / 可塑性 / 大脳皮質 / 遺伝子欠損マウス / 神経活動依存的 |
Research Abstract |
発達期の片眼、両眼視覚機能欠損に伴う脳神経回路の可塑性の分子メカニズムの解明を目的として、視覚入力遮断によって遺伝子発現レベルが変化する分子の1つである代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ1(mGluR1)の機能解析を行った。生後20-35日マウスの片眼視覚入力遮蔽を行い、遮蔽された眼又は開いていた眼からの大脳皮質視覚野における視覚応答を、活動依存的分子であるArcのin situ hybridizationによって解析した。野生型マウスでは、遮蔽されていた眼からの入力は弱まり、開いていた眼からの入力が強まる(視覚野において反応する神経細胞の分布が広がり、Arcの発現量も増大する)(Tagawa, et. al., Nature Neuroscience,2005)。神戸大学医学部饗場篤教授からいただいたmGluR1欠損マウスで同様の実験を行ったところ、mGluR1欠損マウスにおいても野生型と同様・同程度の視覚応答の変化が見られた。すなわち、mGluR1欠損マウスにおいても、Arcの発現で見た眼優位性可塑性に大きな異常は見られないことが示唆された。次に、両眼視覚機能欠損に伴う大脳皮質内の神経回路の再編成メカニズムを明らかにする目的で、大脳皮質内の代表的な神経軸索投射である脳梁軸索をGFPによって可視化する実験系を確立した(Mizuno, et. al., Journal of Neuroscience,2007)。マウス視覚野において、脳梁軸索は片側の大脳皮質から反対側へ、領域特異的・層特異的な投射パターンを示していた。このような特徴的な軸索投射パターンは、発達期の片眼、両眼視覚機能欠損によっても影響を受けなかった。しかし、軸索投射細胞自身の神経活動を抑制するとその投射パターンに大きな影響が表れた。以上の結果は、発達期の脳梁軸索投射パターン形成に視覚入力は関与しないが、脳の中で内在性に起こる神経活動は重要な役割を担っていることを示唆する。脳梁軸索はグルタミン酸を伝達物質としたシナプス伝達を行う。脳梁細胞の活動依存的軸索投射における、mGluR1を含む種々のグルタミン酸受容体を介したシナプス伝達の機能を明らかにしていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)