2006 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の神経回路レベルで成立する嗅覚順応の分子メカニズム
Project/Area Number |
18700319
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
広津 崇亮 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (70404035)
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Keywords | 嗅覚 / 線虫 / 神経可塑性 / 順応 / シグナル伝達経路 / グルタミン酸受容体 |
Research Abstract |
線虫の神経回路レベルで成立する嗅覚順応において、Ras-MAPK経路が介在神経で重要な働きをしている。また、GLR-1グルタミン酸レセプターがこの嗅覚順応に関わっていることも既にわかっている。そこで、本年度はRas-MAPK経路とGLR-1グルタミン酸レセプターとの関係に焦点を当てて解析を行い、以下の成果を得ることができた。 1.まず、免疫沈降により線虫体内からGLR-1タンパクを安定して得られる系を確立した。 2.そのGLR-1タンパクと活性化型MAPキナーゼを用いてin vitroリン酸化実験を行い、GLR-1がMAPKにより直接リン酸化を受けるという結果を得ることができた。 3.MAPKがリン酸化する部位を同定するために、候補アミノ酸である616番セリンをアラニンに置換した改変型GLR-1を作製した。 4.この改変型GLR-1を線虫の神経に発現させ、免疫沈降により取得した。次に、in vitroリン酸化実験を行ったところ、改変型GLR-1はMAPKによるリン酸化が約1/10に減少するという結果が得られた。 これらの結果は、MAPKがGLR-1の616番セリンをリン酸化することにより、その活性や局在を制御する可能性を示唆している。グルタミン酸レセプターがMAPKにより直接制御を受ける例は、他の生物を含めて知られておらず、新規性の高い知見であると考えられる。 また、この嗅覚順応に関わる新規因子を探索することを目的として、嗅覚順応異常変異体のスクリーニングを行った。その結果、候補因子を複数得ることに成功した。
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