2006 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ学習記憶中枢の神経層形成を制御する分子基盤の解析
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18700326
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
来栖 光彦 国立遺伝学研究所, 構造遺伝子学研究センター, 助手 (50413985)
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Keywords | 脳神経系 / 神経回路 / 神経発生 / ショウジョウバエ / キノコ体 / cadherin / receptor-linked protein tyrosine phosphatase |
Research Abstract |
本研究は、ショウジョウバエ脳において学習記憶中枢として機能するキノコ体の神経構造に着目し、その位相的な軸索層構造がどのように作られるか,その分子基盤の探索を目的とする。キノコ体の位相的な軸索層構造の確立には、新生神経による軸索群の集束と軸索層構造の中核領域への選択的な投射が必須である。これまでの解析によって、この新生神経の選択的な集合にN-cadherin(N-cad)が必要であることが明らかになっている。 今年度の研究実績:(1)N-cadの姉妹遺伝子であるN-cad2の必要性を検証した結果、N-cad2変異体においてはキノコ体の神経構造に異常を見つけることが出来なかった。(2)キノコ体の新生軸索に高レベルに局在する分子として4種類のreceptor-linked protein tyrosine phosphatases(PTP10D, PTP69D, PTP99A, Dlar)を同定した。変異体を用いた解剖学的な解析によって、PTP69Dは軸索の分岐に、Dlarは軸索伸長の正確な制御に必要なことが明らかになった。(3)透過型電子顕微鏡を用いた免疫組織学的解析を行うことによって、N-cadの発現部位を微細構造レベルで確認しようと試みたが、良好なシグナルが得られなかった。実験条件の改良が要求される。(4)これまでの解析から、新生神経の軸索ではN-cadが発現し、発生が進行するに伴いN-cadに代わってFasIIが発現することが明らかになっている。これら細胞接着分子の発現の移行がどのように制御されているのか、その引き金となる機構を探索した。改変型のopen rectifier K channelの過剰発現によってキノコ体の電気活動を抑制した状態で発生させた結果、異常な層構造形成と成熟神経におけるFasIIの抑制が確認できた。また、逆に膜の興奮性を増大させるBacterial voltage sensitive Na channelを強制発現させた結果、FasIIの発現レベルの増加が確認できた。このことから少なくともFasIIの発現レベルの調節に電気活動が関与する可能性が示唆される。
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