2006 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病関連モデル動物における脳機能障害の分子神経病理学的研究
Project/Area Number |
18700353
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
福田 哲也 独立行政法人理化学研究所, アルツハイマー病研究チーム, 研究員 (70316511)
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Keywords | アルツハイマー病 / トランスジェニックマウス / リン酸化タウ / 内嗅皮質 / 周嗅皮質 / 神経細胞死 |
Research Abstract |
今年度は、アルツハイマー病ならびに関連疾患のモデルとして、ヒト野生型タウまたはヒト変異型タウ(P301L変異)を過剰発現させたトランスジェニックマウスの神経病理学的解析を中心に行った。これらのマウスは、ヒトタウの発現量はほぼ同様で、また生後12・24ヶ月齢共に同量に発現することが生化学的に確認された。しかし、野生型タウ発現マウスでは神経原線維変化を構成するサルコシル不溶性タウは老齢(24ヶ月齢)でもほとんど検出されず、P301Lタウ発現マウスでは24ヶ月齢で検出された。免疫組織化学でもマウス脳内に広くタウがニューロンに蓄積し、またリン酸化タウも認められた。特に、野生型タウ発現マウス脳では、老齢になるとリン酸化タウを認識するAT-8抗体による染色では、ヒトタウの分布と一致して脳内に広くみられた他、さらに高度にリン酸化されたタウを認識するPHF-1抗体には陽性反応を示すニューロンが内嗅皮質・周嗅皮質に限局して多数観察された。本研究と平行して行われたこれらマウスの行動学・生理学的実験より、水迷路学習の障害とそれに関連した内嗅皮質・周嗅皮質の活動低下がMRIで見られた。従って、老齢期にこれらの部位に蓄積するリン酸化タウ、特にPHF-1タウがニューロンの機能低下をもたらし、空間学習障害を引き起こしたと考えられる。 一方、P301Lタウ発現マウスではリン酸化タウは野生型タウ発現マウスほど多くはなかった。しかし、このマウス脳ではニューロンの脱落が内嗅皮質・周嗅皮質などの部位で認められ、それに伴いGFAP陽性を示すアストロサイトの増殖も確認された。これらの部位では、正常マウスや野生型タウ発現マウスに比べて約20〜25%の神経細胞が減少していた。現在、このマウスについてさらに詳細に検討を続けている。
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