2006 Fiscal Year Annual Research Report
ドーパミン神経保護作用を示すプロテオグリカンの構造とその作用分子機構
Project/Area Number |
18700370
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
外角 直樹 久留米大学, 医学部, 助手 (60368884)
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Keywords | 合成糖鎖分子 / 神経保護作用 / ドーパミン神経 / 細胞内情報伝達 |
Research Abstract |
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)やヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)は、神経損傷時の細胞の保護や修復、神経再生を制御している糖鎖分子である。しかしながら、これらプロテオグリカン(PG)の神経保護作用を示す部分の正確な糖鎖配列・構造は決定されていない。これは、CSPGやHSPGの分子構造が非常に複雑であるため、神経組織からの精製や化学合成が困難であることが原因となっている。生理活性を示すPGの糖鎖配列・構造を明らかにし、その機能を医療に応用するためには、複雑な構造の糖質が繋がったPGやその誘導体を人工的に合成するための技術開発とその合成PGの性質や生物学的機能を評価することが必要である。 本研究は、研究協力者のDr.Hsieh-Wilson L.C.(カリフォルニア工科大学)により合成されたPGライブラリー分子を利用し、パーキンソン病誘発神経毒であるRotenoneによるドーパミンニューロン変性に対して保護作用を示すPGの糖鎖配列・構造と、その作用分子機構を明らかにすることを目的としている。平成18年度は、マウス中脳由来細胞(MN9D、MN9X)を用いて、Rotenoneによる細胞変性の分子メカニズムについて検討した。 Rotenone(20nM)の添加培地で、MN9D、MN9X細胞を培養後、細胞の生存率をMTT法により計測した。Rotenoneを添加せずに培養したコントロール細胞の生存率を100%とした時、チロシン水酸化酵素(TH)陽性細胞であるMN9Dの生存率は、58.7±5.8%であり、コントロール細胞に比べて有意に低下した。一方、TH非陽性細胞であるMN9Xの生存率(91.7±6.1%)は、有意な差は認められなかった。Rotenone添加によるMN9D細胞の生存率低下は、THの活性阻害剤(α-MT)の処理によりドーパミン合成を抑制することで消失した。以上より、RotenoneによるTH陽性細胞の変性は、ドーパミンの放出抑制に伴う酸化的傷害による可能性が示唆された。この細胞変性メカニズムに対して保護作用を示すPG構造は、現在スクリーニング中である。
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