2007 Fiscal Year Annual Research Report
強化学習仮説に基づく淡蒼球の役割について明らかにする研究
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18700383
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
上田 康雅 Kyoto Prefectural University of Medicine, 医学研究科, 助教 (60332954)
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Keywords | 大脳基底核 / 強化学習 / 行動選択 / 線条体 / 淡蒼球 / ドーパミン |
Research Abstract |
我々は以前,試行錯誤学習課題遂行中のサルの線条体に,過去経験した数試行の結果に基づいた行動価値をコードする細胞が多数存在することを示した。この行動価値の情報が線条体に形成されるメカニズムとして,この細胞に対するドーパミンを介した報酬予測誤差情報の入力が重要であるという仮説が強化学習仮説の枠組みから提唱されている。この仮説を検証するため平成19年度の実験において,ドーパミンD1受容体の選択的阻害剤である薬物SCH23390を,課題遂行中のサルの線条体へ注入し,行動選択にどのような影響が表れるかを調べた。この結果,サルはいつまでも価値の高い行動を適切に選択することが困難になった。つまり,ドーパミンのD1受容体を介した情報が線条体に入力することが,この課題において,適切な行動選択発現をすることに必須であると示唆されたのである。この結果は,ドーパミンを介した報酬予測誤差情報が,線条体の細胞にD1受容体を経て伝わることが阻害され,線条体において適切な行動価値が形成されにくくなったことに原因があると我々は考えている。この知見は,線条体の強化学習仮説に基づいた役割について提唱されている前出の仮説を強く支持する重要な発見である。この結果に関しては,Neuro2007第30回日本神経科学大会で報告を行ない,現在論文を執筆中である。さらにわれわれは本年度,この線条体から投射を受け,かつ大脳基底核の最終出力を担う神経核である淡蒼球において神経活動の記録を行う予定をしている。この記録によって線条体から淡蒼球へ投射する行動価値の情報が,どのようにして淡蒼球で取捨選択を受け,行動選択が起こるのかが明らかになると考えている。
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Research Products
(2 results)