2006 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス負荷が引き起こす行動変化におけるシナプス分子X11Lの機能
Project/Area Number |
18700403
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐野 良威 独立行政法人理化学研究所, 行動遺伝学技術開発チーム, 研究員 (90415175)
|
Keywords | ストレス |
Research Abstract |
複雑化した社会や不安な情勢を反映しストレス負荷は増大し、誰もがストレスを原因とするうつ病などの精神病を患う危険にさらされている。ストレス負荷により、脳において神経回路が構造的、機能的に変化し行動として表出するが、その詳細な分子機構に関する解明は進んでいない。その原因の一つとして適切なモデルマウスがいないことが挙げられる。 研究代表者は、これまでにアダプタータンパク質X11Lの生理機能に関する解析を行い、X11Lがアミロイド前駆体タンパク質(APP)の代謝を制御しAβの産生を下げることを明らかとした。一方、行動学的解析からX11L遺伝子欠損マウスが競争環境下において社会的に劣位に陥ることを示唆する結果を得た。X11Lは脳特異的に発現し、シナプス部位に多く存在し神経伝達物質の放出に関わる様々な分子群と相互作用することから、変異マウスにおける行動表現型の原因のひとつとして神経伝達機能の異常が起きている可能性を考え電気生理学的な解析を行った。しかしながら、基本的な神経伝達機能、前シナプスの機能、長期可塑性において変異マウスと野生型マウスの間に差は観察されなかった。次に変異マウスにおける行動表現型をさらに詳細に検討した。その結果、変異マウスにおいて明らかな活動量の低下、不安の亢進、うつ病様行動は観察されなかったが、比較的不安のレベルが低い条件において、これらを避ける行動が変異マウスで低下していた。さらに、変異マウスにおいてモノアミンのレベルの変化が観察された。これらの結果はX11Lがモノアミン系を介して個体における危機回避に働いている事を示唆する。また、変異マウスにおける危機回避能力の低下が、競争力の低下につながっている可能性が考えられる。
|
Research Products
(2 results)